風が強ければ人も飛ぶ~強風注意報~

同じ現場は2度と無い.
消防の世界ではよく言われている言葉です。

だからこそ、その1回しかない現場で失敗しないように日々訓練をしているのです。
3月も終わりに近づいたある日、空は晴れているのに風がとても強い日がありました。

こんな日は風に煽られて転ぶ人がチラホラ出てきます。
朝のミーティングが終わり、前回出場した際の提出書類を作成しようとした時、出場指令が鳴り響きました。

指令内容は、高齢者の女性が風に煽られて転倒。
皆様が思っている以上に天候に左右される仕事なのです。

指令を受けての感想は「やっぱりか」くらいのもの。
そう思って現場に向かいました。

マンションのエントランスから外に出ようとした際に、突風が吹き転倒したとのこと。
腰を強く打って動くのが辛そうです。
慎重に救急車に収容して病院に向かいます。

「やっぱり転倒した人いましたね」

「うちらも車の開け閉めとか気を付けないと風に邪魔されますね」

「そうだな」

と帰りの車内で話していると、また指令が掛かりました。
帰り道が突如として現場へのルートに変わった瞬間でした。

指令内容は、高齢者の女性が風に煽られて転倒。

デジャヴュ。

さっきの指令内容が録音されていて、少しの時間をおいて再生されたような感覚でした。

「行こう」

「はい」

自宅から外に出ようとした際に、突風が吹き転倒したとのこと。
腰を強く打って動くのが辛そうです。
慎重に救急車に収容して病院に向かいます。

「やっぱり多いですね」

「そうだな」

と帰りの車内で話していると、またまた指令が掛かりました。

まさか…。

「二度あることは三度ある」
「三度目の正直」

ことわざバトルの火蓋が切って落とされました。

指令内容に耳を傾けます。

高齢者の女性が…

はい来ました3回目。

散歩の途中で犬に引っ張られ転倒。

犬でした。

車内みんな心が一つになった瞬間でした。

三度目の正直。同じ現場はそうそう何度もありません。